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松山地方裁判所 昭和43年(ヨ)161号 決定 1968年6月05日

債権者 伊予商運株式会社

右代表者代表取締役 藤森兼三郎

右訴訟代理人弁護士 白石隆

債務者 堀内仙次郎

第三債務者 株式会社長谷運油商会

右代表者代表取締役 長谷音松

主文

債権者において金五〇万円の保証を立てることを条件として、債権者の債務者に対する損害賠償債権金一四〇万円の執行を保全するため、債務者の第三債務者に対する別紙目録記載の債権は、仮に差し押える。

第三債務者は、債務者に対し差押にかかる債務の支払をしてはならない。

その余の本件申請を却下する。

理由

申請の趣旨および理由は別紙のとおりである。

(当裁判所の判断)

一、≪証拠省略≫によれば申請の理由一項、二項記載の各事実が一応認められる。

二、≪証拠省略≫によれば、債権者は、昭和四二年一月から同年一二月迄、汽船瑞運丸(以下単に本件船舶という)の当時の所有者大成汽船株式会社から本件船舶を傭船料一ヶ月平均九五〇、六二五円で傭船し、一ヶ月平均二〇万円以上の利益を得ていたこと、したがって傭船料が一ヶ月一〇五万円である本件契約に基づく傭船によって債権者は特段の事情のないかぎり相当期間にわたり一ヶ月平均一〇万円以上の利益をあげうべきはずであったことが一応認められる。

ところで当裁判所は、本件のような場合においては、右逸失利益中契約解除時以後の分は、これを債務不履行に基づく損害賠償として当然には請求することができず、これを請求するためには、債権者において合理的努力を払ったにもかかわらず現在に至るまで本件船舶に代るべき汽船を傭船しえなかったこと、将来においてもかかる傭船の見込のたたないこと、および、かかる事情を債務者において予見し、もしくは予見しうべかりしことを証明する必要があり、保全処分申請の段階においては右状況を疏明することを要し、右疏明のあった期間にかぎり右逸失利益を右損害賠償債権の内容として考えうると解する。けだし、本件契約の解除により債権者は、契約関係の拘束から解放されるのであるから、通常は右解除時以後は本件船舶に代るべき汽船を傭船して同程度の利益をあげ損害の発生を防止しうるはずであり、さらに他船の傭船にあたっては債権者において合理的努力を払って債務不履行から発生すべき損害を最少限にすべき信義則上の義務があると解されるからである。

債権者は本件船舶に代るべき汽船を今後少くとも三年間は傭船しえないと主張するが、≪証拠省略≫によってもこれを一応認めるに十分であるとはいえず、他にも右期間について前示のような意味での疏明があったとするにたる証拠はない。しかし、≪証拠省略≫を総合すれば、本件契約期間の始期から解除時までと解除時以後少なくとも約一年間については、右疏明があったものと認めてさしつかえない。そうすると、結局、債権者が債務者の本件債務不履行の結果、少なくとも一四〇万円(昭和四三年一月から同四四年二月までの一四ヶ月間、毎月一〇万円宛)のうべかりし利益を喪失したことの疏明があったことになるので、債権者が債務者に対し右同額の損害賠償債権を有するものと一応認めることができる。

三、よって、債権者の本件申請は右一四〇万円の請求債権に基づく限度において理由があるのでこれを認容し、その余の部分は理由がないのでこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 秋山正雄 裁判官 伊藤滋夫 友添郁夫)

<以下省略>

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